vol.19睡眠時無呼吸症候群の治療法 その①
CPAP(シーパップ Continuous Positive Airway Pressure 経鼻的持続陽圧呼吸療法)について
2018/11/12
閉塞型の睡眠時無呼吸症候群の治療法としては、主にCPAP(シーパップ)、マウスピース(スリープスプリント)、手術療法、nastent®(ナステント 保険適応外)などがあります。その中でもCPAPがエビデンスも十分にあり効果も確実なため、治療法としては第一選択とされています。CPAP療法についてお話していきたいと思っております。
睡眠時無呼吸症候群の診断はPSG検査でAHIが5以上(AHI5は1時間当たり10秒以上呼吸が止まっている回数が5回あるということです)と定義され、AHI20以上でCPAP療法の適応とされています。
CPAPを装着することでなぜ睡眠時無呼吸症候群が改善するかと言いますと、機械からチューブを通して鼻に装着したマスクに圧力をかけた空気を送ることで舌根や軟口蓋など閉塞させている組織を内部から風船のように膨らませることで気道の狭窄・閉塞を防ぎ、楽に息を吸ったり吐いたりが出来るようになるという原理です。(図1)
効果としましては、CPAPはAHI20以上の中等症~重症の患者さまに導入することで、心筋梗塞や脳梗塞、脳出血などの心血管イベントを有意に減少させたり(図2)、健常人と治療せずの放置していた睡眠時無呼吸症候群の患者様とを8年間の死亡率で比較してみると、健常人の4%に対して、睡眠時無呼吸症候群の患者様は37%と圧倒的に高いと示されていますが(図3)、CPAP療法を正しく行うことで健常者と同等にまで低下させることが証明されています。(He J, et al. Chest. 1988;94:9-14.)
中等症から重症の睡眠時無呼吸症候群は上記でもありますように治療せずに放置しておくと8年後の死亡率が37%と示されており、癌に置き換えますと胃癌や大腸癌と同等の死亡率であるため、胃癌大腸癌を宣告されたのと同等の危機感が必要と思われます。胃癌や大腸癌であれば、根治するためには「まずは手術」と想起するように、睡眠時無呼吸症候群と診断されれば「まずはCPAP」と速やかに治療を開始する必要があります。正しい治療を経験の多い医療機関の下で行うことで健康寿命も延びることが証明されているため、是非とも加療をお願いしたいと思っております。確かにCPAPが合わない人もおりますため、その場合は後日、お話しますスリープスプリント(マウスピース)や手術療法、nastent®を考慮していく必要があります。いずれにせよ放置することが寿命を縮めていることは確かのようです。
すぎもと医院 院長 杉本 由文
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