確かに骨折した後の手術は整形外科の得意分野ですが、検査結果の正確な分析と薬の効果を確かめつつ、最適できめ細やかな治療を行うのは内科医の得意分野といえます。
実際、骨粗しょう症は内科(代謝・内分泌)の病気であり、特に欧米では多くは内科医が中心となって骨粗しょう症の診療を行っております。骨粗しょう症の高いリスクである閉経後の女性において、内科医が診断治療を行う欧米では骨粗しょう症の治療をしている人の割合が45%に対して、日本では20%前後とかなり低く、そのため日本人の椎体骨折発生率は欧米人に比べて2~3倍高いと言われております。
今後、10年、20年後、元気でピンピン長生きするためにも骨粗しょう症に不安を感じられている方は、お気軽にご相談ください。
骨粗しょう症とは
骨の強度が低下し、骨折しやすくなる骨の病気を「骨粗しょう症」といいます。
骨粗しょう症により骨がもろくなると、つまずいた時に手や肘をついたり、くしゃみをしたりなど、わずかな衝撃で骨折してしまうことがあります。
がんや脳卒中、心筋梗塞のように直接的に生命をおびやかす病気ではありませんが、骨粗しょう症による骨折をきっかけに介護が必要になる人も少なくありません。
骨粗しょう症は痛みなど自覚症状がないことが多く、定期的に骨密度検査を受けるなど、日ごろから細かなチェックが必要です。
骨粗しょう症による骨折しやすい部位
- 背骨
- 脚の付け根
- 手首
- 腕の付け根
女性の骨密度の変化
骨粗しょう症は女性に多い病気で、患者さんの80%以上が女性と言われております。女性ホルモンの一種であるエストロゲンは、骨の新陳代謝に際して骨の吸収をゆるやかにして骨からカルシウムが溶け出すのを抑制する働きがあります。
そのため50歳をこえて閉経期を迎え女性ホルモンの分泌が低下しますと、急激に骨密度が減り、同年代の男性に比べて早く骨密度が低下する傾向にあります。 将来、骨密度が低下し腰椎の圧迫骨折などを予防するためにも早期の治療介入が必要とされております。
骨粗しょう症の検査
骨密度検査
「骨密度」は骨の強さを判定するための指標です。骨の中にカルシウムなどのミネラルがのど程度あるかを測定します。
DXA(デキサ)法
エネルギーの低い2種類のX線を使って測定します。全身のほとんどの骨を測ることができます。一般的に腰の骨(腰椎)や脚の付け根(大腿骨近位部)の骨密度を正確に測定して表されます。
超音波法
かかとやすねの骨に超音波をあてて測定します。骨粗しょう症の検診に用いられることが多く、X線を使用していないため、妊娠中の方でも測定することができます。
MD(エムディ)法
X線を使って、手と骨の厚さの異なるアルミニウム板とを同時に撮影し、骨とアルミニウムの濃度を比べることによって測定します。
レントゲン検査
主に背骨(胸椎や腰椎)のX線写真を撮り、骨折や変形の有無、骨粗しょう化の有無を確認します。
骨粗しょう症の治療方法
骨粗しょう症の治療目的は、骨密度の低下を抑え、骨折を防ぐことにあります。 骨粗しょう症の発病には、食事や運動などの長年の習慣も深く関わっています。そのため、薬物治療とともに食事療法や運動療法も並行して行い、骨密度を高めていくことが重要です。最近では早期治療により、骨粗しょう症による骨折がかなり防げるようになりました。現在使われている薬は骨の吸収(骨が溶ける)を抑える薬、骨の形成(骨を作る)を助ける薬、吸収と形成の骨代謝を調整する薬の3つに大別できます。
骨の吸収を抑える薬
・女性ホルモン製剤
・ビスフォスフォネート製剤
・SERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)
・カルシトニン製剤
・デノスマブ
- 骨の形成を助ける薬
・ビタミンK2製剤 ・テリパラチド - 吸収と形成を調整する薬
・カルシウム剤 ・活性型ビタミンD
骨粗しょう症治療は根気よくしましょう
多くの場合、骨粗しょう症の薬物治療は、1年・2年~といった息の長い治療で効果があらわれます。痛みが消えた、なかなか骨密度が上がらないからと、自己判断で薬を中断しないようにしましょう。
薬が飲みづらい、服薬が難しい場合は相談してください。